メノポーズについて学びましょう。
更年期障害に対して高い効果を示すHRT。最近では大勢の人に知られ、その効果を実感している人がふえていますが、欧米などに比べそのメリットを受ける日本女性は少ないのが現状です。
それでは、HRTについて現在わかっていることを説明しましょう。
HRTとはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲストーゲン(黄体ホルモン)を製剤によって補う方法です。
エストロゲン欠乏による不定愁訴をはじめとするさまざまな更年期症状の治療。エストロゲンが欠乏することにより、更年期以降かかりやすくなる病気の予防と治療。
HRTの対象とされる疾患は、更年期障害で、とくにエストロゲン欠乏によりあらわれる、のぼせ、ほてり・発汗、不眠、さらに二次的にもたらされる不定愁訴の一部です。
また予防・治療として、骨粗鬆症、動脈硬化症、高脂血症、萎縮性腟炎、尿失禁、皮膚の萎縮などの疾患が対象となります。
あんなところ、こんなところにも効きます。
更年期の初期に多くみられるのが、のぼせ、ほてり・発汗、不眠ですが、特に、突然顔がカーッと熱くなるホットフラッシュ、急に汗がポタポタと落ちてくる異常発汗が人前で起こると、恥ずかしさで消え入りたいような気持ちになります。これらの症状にHRTは劇的な効果を発揮。大多数の人が、服用して1~2週間程度で症状が軽くなることを実感できます。
やはり劇的な効果がみられるのが、腟粘膜の乾燥に対してです。もちろん、腟粘膜の乾燥や、萎縮性腟炎に伴って生じる性交痛もなくなります。
更年期に発症した頭痛、頭重、肩こり、手足のしびれ、腰・背部痛、全身倦怠感、不眠、冷えなどにも効果があります。
更年期障害は女性のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)、つまり生活の質を低下させます。たとえば、ホットフラッシュが頻繁に起こると人前に出にくくなりますし、性交痛があればセックスが苦痛になります。HRTによってこれらの症状が改善することで、心身の状態が改善されQOLの向上につながります。
エストロゲンの欠乏が長く続くと、骨粗鬆症といって骨量が少なくなり骨が弱くなりますが、HRTには骨粗鬆症を予防する効果もあります。また、血中の悪玉コレステロール値を下げ、善玉コレステロール値を上げる作用もあることから、動脈硬化の予防にも役立ちます。ただし、これらがある程度以上に進行してしまうと、元に戻らないため、HRTを早めに開始することが必要です。
HRTを受けている女性は、受けていない女性に比べて大腸がんの発生が少ないという報告があります。また、最近では、エストロゲンを使用していた女性は、アルツハイマー病の発症リスクが低かったと報告されています。
あなたに向いている方法は?
【薬の種類】
エストロゲンとプロゲストーゲンが使われます。
【投与方法(図参照)】
経口剤と貼付剤があります。閉経前か後か、閉経後どれくらい年数がたっているか、子宮があるかないかなど、人によって服用方法は異なります。
【医師に判断を求めましょう】
乳がんや子宮体(内膜)がんにかかっている人。過去にかかったことのある人。重い肝機能障害の人は残念ながらHRTは受けられません。
使用は避けた方がいい人は子宮筋腫,良性の乳腺疾患にかかったことがあるか治療中の人。コントロール不良の高血圧症や糖尿病の人。原因不明の不正出血のある人です。
注意した方がいい女性は胆石症、ヘビースモーカー、高度の肥満の人などです。
しかし、最近は継続して定期検診、検査を受け、コントロールしながらであれば、HRTを受けることができますので、医師と相談してみましょう。
【しっかり説明を受けましょう。】
副作用で多いのは性器出血、乳房の張り(緊満感)と痛み。副作用というより随伴症状というべきかしれませんが、HRTを始めると軽度の乳房の張りと痛み、胃が重い、吐き気、頭痛などが起こる人もいます。HRTを行うと、周期的な投与方法だと黄体ホルモン服用後に月経と同じ様な出血がみられます。
また、持続併用投与方法では不規則に少量の不正出血がしばらく続くことがありますが、たいていは半年ぐらいでしだいになくなっていきますので、心配することはありません。もちろん排卵しているわけではありませんから、妊娠の心配もいりません。
健康管理ができるメリットもあり。
【肝機能の検査】
HRTは肝臓への影響も少ないのですが、長期間の投与では肝機能障害や胆石症の発症に影響が出ることがあります。治療前に行った血液検査や尿検査でこれらのチェックをします。
【子宮内膜の細胞診と経腟超音波検査】
子宮体(内膜)がんについて調べるために、子宮内膜の細胞診、子宮内膜の厚さや筋腫の有無、卵巣の状態などを調べるために経腟超音波検査を行います。性器出血があってもなくても行いましょう。
【乳房検診】
HRTを行っていても、行っていなくても、閉経後は乳がんのリスクが高くなりますので、早期発見のために、触診やマンモグラフィーの検査を受けましょう。また、月に1回は乳房の自己検診を行いましょう。
【高齢者や高度の肥満者は頻繁に血栓の検査を】
高齢者や脱水になりやすい人、高度の肥満の人は血栓症のリスクが高くなりますので、脚の静脈の走行に沿った腫れと痛み(静脈炎の症状)のチェックや、血液凝固系の検査を行います。
【骨粗鬆症の予防が目的の場合は骨量・骨代謝の測定を】
治療前に行った骨量や骨代謝の測定で、HRTによる効果の判定をします。約1年に1回の検査が行われます。
【HRTをいつ開始し、いつまで続けたらいいのでしょうか】
更年期の症状だけ抑えたいのなら、更年期の間だけ続けるということもできます。ただし、心配なのはHRTをやめることでホルモンがまた不足して骨量が減少したり、動脈硬化が進む可能性があることです。このようなことを防ぐためにも、副作用などがなければ長期的に継続されることをおすすめします。
また、HRT継続中は、症状の改善効果や副作用の早期発見などのために定期検査が行われます。検診や検査は自分の体を知るために必要なことです。医師とよく相談し、あなたにとってのHRTのメリット、デメリットを理解したうえで、HRTの継続について自分自身で選択することが大切です。