女性の健康コラム
メノポーズについて学びましょう。
病医院へ行く前に
更年期障害で婦人科の門をくぐるのは抵抗が・・・という人も多いようです。でも、どんな検査や治療が行われるのか予め知っておけば、抵抗感も少なくなるのではないでしょうか。
【病医院で聞かれること(問診)】
自覚症状をきちんと訴えることが大切。
[問診とは]
問診とは医師が患者さんから話を聞くことにより、病気の状態や患者さん自身についての情報を得るのが目的です。更年期障害の場合には前述した「更年期指数」を利用しているところが多いようです。この表に記入してもらい、それをもとに話が進められます。更年期指数は治療の効果を判定するときにも利用されます。
[症状の有無や期間など正確に伝える]
どんな症状がいつごろから始まったのか、月経の開始や現在の状態など、正確に伝えましょう。病歴(既往症)といって、現在かかっている病気や過去にかかったことのある病気、常用している薬、家族歴といって、血縁者の病気などのほか、家族構成、結婚・妊娠・出産などについても質問されます。とくに婦人科疾患や乳がんの病歴、家族歴の有無が重要になります。受診前にこれらのことをメモして持参するとよいでしょう。
【病医院で検査すること】
このさい、しっかり健康診断も。
[正常値には幅あり]
病医院により、また患者さんの訴えにより検査の内容は異なりますが、よく行われるのは次のような検査です。ただ、これらの検査によって出てくる正常値には幅があります。わずかな数値の変動で一喜一憂するより、検査の結果があらわしている意味を主治医にきちんと説明をしてもらうことが大切です。
- 体重、血圧、脈拍、尿検査
医師が全身状態を把握するうえで必要な情報です。
- 全身の診察
栄養状態、貧血やむくみの有無をチェックします。また、乳房、肺、腹部、下肢の視診、触診、聴診を行います。
- 婦人科的診察
○視診・内診=外陰、腟、子宮、卵巣の状態を把握します。
○経腟超音波=子宮筋腫や卵巣の腫瘍などの有無、子宮内膜の肥厚度などをチェックします。
○子宮頸部・内膜細胞診=子宮頸部と内膜の表面をほんの少しこすりとり、
- 子宮頸がんと子宮内膜(体)がんの有無を調べます。
○ホルモン検査=血中のE2(エストロゲン・エストラジオール)、
FSH(卵胞刺激ホルモン)などの値を調べます。
- 乳房検診
触診やマンモグラフィーという乳房専用のX線検査などにより、乳房の異常や乳がんの有無を調べます。
- 貧血についての検査
どんな検診でも、スクリーニングとして行われる検査で、採血して赤血球、白血球、血小板、貧血の指標になるヘモグロビンの値などを調べます。
- 肝機能検査
薬の多くは肝臓で代謝されるため、薬による治療をする場合には肝機能のチェックが必要です。血液検査によってGOT(AST)、GPT(ALT)、LDH、γ-GTP、アルカリホスファターゼなどの値を調べます。また、血糖値の検査も行います。
- 脂質検査
エストロゲン(卵胞ホルモン)の低下は動脈硬化を促進させることから、ホルモン補充療法(HRT)は動脈硬化を改善させる作用があるといわれています。血液検査によって総コレステロール、悪玉コレステロールであるLDLコレステロール、中性脂肪などの値が高くないか、善玉コレステロールであるHDLコレステロールの値が低くないか調べます。
- 骨量測定・骨代謝マーカーの測定
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の有無や程度を調べる検査です。骨量は指・前腕・かかと・腰の骨などを、X線や超音波により撮影して測定します。骨代謝は、血中や尿中の骨代謝マーカー値を調べて診断されます。
こんな症状にこんな治療が
主治医とよく相談して治療法を決めましょう。
【更年期障害で行われる治療は】
ホルモン補充療法(HRT)、漢方療法、抗不安薬や抗うつ薬、自律神経調整薬を使った療法のほか、心理療法や生活指導が行われることもあります。ここでは主な治療法について説明しましょう。
- HRTで治療
更年期障害のおおもとにあるのは卵巣機能の衰退によるエストロゲン欠乏です。したがって、卵巣機能の衰退により不足したエストロゲンを補充するHRT は、理にかなった治療といえます。更年期の初期にみられるほてり、のぼせ・発汗、不眠などのほか、エストロゲンの長期欠乏によって起こる骨粗鬆症や動脈硬化など、さまざまな症状に効果があります。HRTについては後で詳しく説明します。
- 漢方薬で治療
漢方治療は西洋医学とは異なった考え方に基づいて行われます。漢方の専門医は患者さんの自覚症状のほか、おなか、脈、舌などを漢方特有の方法で診察し、体格、体質、体力などを判断して処方します。それを「証(しょう)」といいます。証にはいろいろありますが、一般の人にもわかりやすいのが「虚実(きょじつ)」の証です。ほっそりして体力のない場合を「虚証(きょしょう)」、体格がりっぱで体力が充実している場合を「実証(じっしょう)」、その中間を「中間証(ちゅうかんしょう)」といいます。また証は、症状の変動に伴って変化します。
漢方治療では、更年期障害についても体力低下を“補う”という考え方で、体質や症状の改善を主に治療します。
- 抗不安薬、抗うつ薬などでの治療
イライラ、不安などの精神神経症状が強いとき、抗不安薬(精神安定薬、マイナートランキライザー)や抗うつ薬を使うこともあります。不眠の強いときは睡眠薬を使うこともあります。
- その他の薬での治療
HRTを行うことのできない人で、ほてり、のぼせ、発汗、冷えなどの症状が出ている人には自律神経調整薬を使うこともあります。頭痛には解熱鎮痛薬、関節痛や肩こりなどの痛みには消炎作用のある外用薬を使うこともあります。