第1回 アメリカでの妊婦検診体験

 初めまして。薬剤師のSAKINAです。
 結婚を契機に、現在アメリカのケンタッキー州に住んで3年になります。日本では、治験コーディネーターや保険薬局薬剤師をしていました。今は、一児の母となり子育ての日々です。せっかくの機会ですので、アメリカでの実体験や日本の友人達との話の間での体験談をつづってゆきたいと思います。
 今回は、アメリカでの妊婦検診の経験について話をします。
 アメリカで妊娠が分かってまずしたことは、自分が加入している健康保険会社の保険が使える病院を探すことでした。アメリカでは病院が受け入れている健康保険が同じではないため、事前に病院もしくは保険会社に確認をとることが必須です。日本とアメリカの妊婦検診の来院間隔は、アメリカでは妊娠8週以降しか初回の診察をしないという点を除けば同じように思います。検査内容で日本と大きく違う点は、アメリカでは超音波検査が妊娠中たったの2回(初回と妊娠20週)(場所によっては3回)しかないことでした。妊娠後期は超音波検査が予定されていないので医師に依頼してみましたが、20週の超音波検査の結果と毎回の検査で母子ともに異常が見当たらないので実施する理由がないと断られてしまいました。正直、毎回胎児の様子を目で確認できる日本での検査がうらやましかったです。なお、アメリカではultrasound technicianという専門職があるため、超音波検査はその技術者が実施し、その結果を医師が判断し患者に伝えていました。
 初回検査では、妊婦検診の他に受けることのできる追加検査のパンフレットを配布されました。内容は、胎児の遺伝的疾患やダウン症などの染色体異常による疾患を調べるための検査でした。医師によると、多くの妊婦がNIPTなどの検査を受けているとのことでしたので、私はNIPTを受けることにしました。NIPTは連携する大学病院で受ける必要があり、genetic counselorという職の方が、私および主人の家族の病歴を基に家系図を作成し、遺伝的疾患のリスクや確立について説明をしてくれました。大学病院とクリニックは検査結果などの情報を共有しているようで、検査結果は次回受診時にクリニックの担当医より聞くことができました。NIPTの費用は保険なしでは約800ドル、保険適応後は約250ドルでした。日本での費用と比較すると安いため、より身近な検査である印象を受けました。なお、超音波検査やNIPTなどの際は、夫婦で受診している方が多くみられました。
 医師からの説明で意外だったことは、prenatal vitaminという妊婦用のサプリメント(脂溶性・水溶性ビタミン、ミネラル、DHAなど含有)の摂取の推奨でした。初回診察時に摂取の有無を聞かれ、サンプルまで配られました。アメリカの食品は、fortified foods(栄養素を足している食品) やenriched foods(加工の過程で失われた栄養素を足して戻している食品)でビタミンなどが追加されているものが多いため、反って栄養素の摂りすぎにならないか不安でした。例えば、牛乳にはビタミンDが追加されていたり(fortified food)、パンには葉酸・VB2・ナイアシンなどが追加された小麦がよく使われています(enriched food)。医師にはサプリメントと食品による過剰摂取はあまり気にする必要はないと言われましたが、アメリカの食品成分表は日本より詳しく表示されているため、買い物の際はラベルを見るように心がけていました。

 日本とアメリカで大きく違うと感じた点は、処方箋の出し方及び患者の医師への連絡の取り方です。産婦人科に限らず私が今までかかったアメリカの病院では、病院初回受診時にかかりつけ薬局を聞かれ、薬処方時はその薬局に直接処方箋が電子で送られるようなシステムになっていました。今回産婦人科で薬を処方してもらった際、薬情にある副作用の症状が出たため薬剤師に確認をとりましたが、薬をやめるべきかは医師に直接確認するよう言われました。その日は休診日でしたが、病院の電話には医師と連絡がとりたい患者用のダイアルがあり、留守電を残すと医師より直接連絡をもらうことができました。ちなみに、診察時間内の病院の電話にはナースにつながるダイアルもあるので、質問がある際は直接ナースに訪ねることができました。
 アメリカでの妊婦検診では、特に問題がなかったためか体重の増加幅、運動および食事に関して指導をされたことはなく、医師からは自分のライフスタイルを続けるようにとの指示をうけました。日本にいる友人の経験談と比較すると、アメリカの病院での妊婦検診は比較的あっさりしていて、不必要な検査はしないというスタンスであるように感じました。なお、母子手帳は必要な書類をアメリカ領事館に申請することで、アメリカにいながら受け取ることができました。

 

・第1回 アメリカでの妊婦検診体験
・第2回 アメリカでの妊娠出産記録
・第3回 日本とアメリカのワクチン接種について
・第4回 ラクテーションコンサルタントにお世話になった体験談
・第5回 アメリカの搾乳機について
・第6回 アメリカの赤ちゃん用ミルクについて
・第7回 新型コロナウイルスについて@ケンタッキー州 Part 1
・第8回 新型コロナウイルスについて@ケンタッキー州 Part 2
・第9回 アメリカの産休育休事情
・第10回 第10回 新型コロナウイルス事情について@ケンタッキー州(7月の状況)
・第11回 病院受診について~整形外科(Orthopedics)編~
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