HAP活動レポート

「鹿児島県女性の健康支援情報」レポート

鹿児島県 女性の健康サポート事業について(外部リンク)

鹿児島県 女性の健康サポート薬局について(外部リンク)

 鹿児島県では、性差を考慮した医療の推進や女性の健康づくりを支援する環境づくりを、医療機関や産業界と協同して進めている。平成19年度に「女性の生涯にわたる健康サポート事業」の中で「女性の健康サポート薬局」の指定がはじまった。

 「女性の健康サポート薬局」指定の目的は、女性が健康問題について相談しやすい環境を整備するとともに、健康づくりに関するポスターの掲示や資料の配布等により女性の健康づくりの普及啓発を図ることにある。その指定要件のひとつに、「女性の健康問題や性差医療に関する専門的知識を有する薬剤師がいること」があげられているが、その知識を得るためのスキルアップ講習会等は開催されておらず、薬剤師個人の資質に任されているのが現状だ。

 県薬剤師会等主催の研修会がなされない中、有志参加のもと、2008年6月『薬局でできる女性の健康支援研修会』を(株)ジェンダーメディカルリサーチ代表 宮原富士子先生に講師をお願いし実現できた。

 その後、女性の健康サポート薬局に指定されている薬局薬剤師に行なったアンケートで65%の薬剤師が「女性の相談客にいつでも相談にのれることをアピールし相談にのりたい」。45%が「指定を受けたことを契機に、女性の健康支援に関する研修を受け技能をみがきたい」と答えている。

 一方、74%が「相談されたことにきちんと対応できるか不安」をもち、42%が「他の医療機関と連携が取れるか不安」を持っている現状がわかった。

 また、62%の薬剤師が学会や関連研修会に「地元開催であれば参加したい」と答えている。(2008年10月 第41回日本薬剤師会学術大会で発表)鹿児島県という地理的不利益を感じるのか、学会参加のための日程、経費の確保が難しいと感じる薬剤師は多い。

 その「研修を受け技能をみがきたい」という熱い要望に答えるべく、第14回日本更年期医学会ワークショップを契機として、鹿児島大学病院産婦人科の医師達が参加する研修会開催の際には、お知らせをいただけるように宮原富士子先生に手配をしてもらった。

以下は、その報告。

◎鹿児島産婦人科漢方セミナーⅢ

日本産婦人科学会鹿児島地方部会の研修会に参加しました。

平成21年11月6日(金) 鹿児島東急ホテル)

・特別講演Ⅰ 『漢方薬はなぜ効くのか-現代薬理学からみた漢方薬の作用-』
 昭和薬科大学病態科学教室 教授 田代眞一先生

・特別講演Ⅱ  『女性の不定愁訴と漢方-各ライフステージの特徴から処方を考える』    
 東京歯科大学市川総合病院 産婦人科 教授 高松 潔先生

《一言メモ》

・主な生薬の主成分は、そのままでは吸収されにくい“配糖体”。糖を切り、利用する菌(資化菌)がいないと効かない。 抗生剤等で資化菌を抑えると漢方薬は効かなくなる。

・月経前症候群(PMS)、更年期障害に対する漢方治療  HRTと漢方療法の総合的効果の比較、エビデンスレポート

◎鹿児島マイスリー学術講演会-更年期女性と不眠-

平成21年12月10日(木) 鹿児島 城山観光ホテル

・一般演題 

1.『緩和ケア病棟での不眠への対応』
  相良病院 坂本仁美先生

2.『乳がん術後の不眠症状に奏功したマイスリーの使用経験』
  さがらクリニック21院長 古謝将一郎先生

・特別講演

『更年期外来患者における不眠症の診断と治療』
東京医科歯科大学 全人的医療開発学系診療・緩和医療学 准教授 松島 英介先生

《一言メモ》

・坂本先生のご講演 “全人的疼痛”は4種類ある。 身体的疼痛、精神的疼痛、社会的疼痛、霊的(スピリチュアル)疼痛 この話を聞いて、久しく参加できていない“日本スピリチュアルケア学会” の設立大会に参加したときのことを思い出した。“患者に寄り添う” “見守る” 医療を必要とする時でも薬物治療だけでは限界のある霊的なケアも必要。

・松島先生が、ご講義の後、 「妊婦の不眠にもマイスリーは安全」という話をしてくださいました。(FDA:B)

・ 勤務医の先生方は、その病院に採用されている睡眠導入剤で処方をやりくりされている。睡眠導入剤に限ったことではなく、他の薬剤でも同様であろう。松島先生のお話の中で、導入剤を使い分ける話もあったが、外来患者は院外処方にすれば解決できるが、入院患者に限ってはそれぞれの在庫状況で制限がある様子がうかがえた。

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 それぞれ、女性の健康サポート薬局の薬剤師にも案内をし、数名で参加しました。 参加者の感想は「よかった」「おもしろかった」と、好評です。

 産婦人科の医局。堂地教授に、学会つながりでお誘いいただけることに感謝しています。

 野崎雅裕先生曰く『同一の女性を健康へと導き幸福感を与えるという共同作業において、 医師とメノポーズカウンセラーが同じ方向を向いていることが重要』(2009年11月第8回 更年期と加齢のヘルスケア学会学術集会シンポジウム:メノポーズカウンセラーとは、NPO法人更年期と加齢のヘルスケア認定の資格)から引用すると、「医師とコメディカルが同じ方向を向いていることが重要」医師が知りたいことは、薬剤師も知りたいこと。

 薬局薬剤師は、地域住民がフリーアクセスできる最適な場所にいるにもかかわらず、その職能を十分に発揮できていないのではないだろうか。情報発信するには、まず、正確な知識の充電が必要。そして、そのプレゼンテーション能力を身につけること。求められるのは、医師とコメディカルが女性の健康支援という目的に向かって、一緒に研修、ディスカッションできる場。これからも女性の健康支援に興味のある薬剤師たちと、共に研鑽を積んでいきたいと思う。

岩下弘美(薬剤師/あすなろ薬局)

「女性の健康支援」「ウイメンズヘルスケア」私たちの活動で応援します。
この法人は、女性のライフステージに応じた健康管理と疾病管理(以下「ウィメンズヘルスケア」という)の改善とその向上を図るための情報を、広く一般女性および医療ならびに関連領域に従事する者に伝え、社会にウィメンズヘルスケアのあり方を提言する。それらの活動により女性のQOL向上に貢献することを目的とする。併せて、地域包括ケアに関わる医療・介護職の人材育成や調査研究により、老若男女が協働できる仕組みを提言し、地域住民の健康維持・増進に寄与することを目的として活動する 特定非営利活動法人です。